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| 今回は、認知症の高年者の〈残されている能力について〉を話させて頂きます。 Pさん 81才・女性(特記すべき既往症はなし) Pさんは娘さんと長男ご夫婦に連れられて病院に来ました。Pさんは「お世話になります」とニコニコしながら挨拶をされました。 外来の診察でしなければならないことのひとつに、ご家族が考えている程度の認知症状態に患者、つまりPさんが該当しているかどうかを検討することがあります。 よくあることですが、親を事実以上に重度の状態と考えているご家族がいます。また、事実以上に軽度に考えて対応しているご家族もいるのも事実です。いずれの場合も対応が不適切となり、親の認知症を進行させてしまう原因となります。 この点に注意しながらPさんと話を続けた結果、ご家族がPさんの状態を事実以上に重度に考えていることが分かりました。つまり、「お母さんはこんなに悪くなってしまった。どうしよう、どうなるのだろう」と絶望的になり、焦りのためイライラし、Pさんへ必要以上の注意と励ましの言葉を繰り返していることが分かったのです。これではPさんは慌てたり、混乱しておどおどしたりしてしまいます。半分位は分かっていることでも、全く分からない状態の言動しかとれなくなってしまうのです。 Pさんに席を外してもらい、娘さんと息子さんご夫婦と話をしました。「最近の母は本当にどうなっちゃったのかと思うくらい、いろいろなことに間違いが多くなりました」と言う娘さんに代わって、お嫁さんが続けました。「トイレの中を排泄物で汚してしまったり、下着を汚してしまいます。トイレの使い方、排泄の仕方も忘れてしまったようなのです」。娘さんも「話して聞かせてもすぐに忘れてしまうし、着替えもできなくなりました。先日はセーターをズボンみたいに履こうとしていました。私の名前を忘れている時もあり、情けなくて、情けなくて……」 話を聞いていて気づいたことを、次のようにご家族に説明しました。 「皆さんの対応の仕方では認知症は進行しやすくなります。今からか5年くらい経った頃には、Pさんは何もわからなくなっているでしょう。Pさんのその頃の症状は次のようになると思います。 Pさんは日本語も理解できなくなり、話し掛けられていることも分からなくなります。また、フラフラと歩き回り、落ちている物を拾って食べるでしょう。もちろん、皆さんの名前は全くわからなくなります。自分の子供だということもわかりません。皆さんが名前を教えても、聞こうともしないでしょう。大小便は部屋中に垂れ流しの状態となるでしょう。トイレという場所は、Pさんの生活に意味を持たなくなります。衣類も生活に関係のないものとなります。着ることの意味もわかりません。おむつ等を引きずって歩き回るでしょう。皆さんは、そうなるとあきらめてはいても、このような最終的な行動に、きっと悲しまれることでしょう。 |
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