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私たちは人生を配偶者や子供たちと一緒に送ります。もし子供たちに不満を持ったまま老いを迎え、さらに認知症に陥るようなことになれば、その人はまだ忘れる筈がない時期であるにもかかわらず、自分の子供の人数・名前を忘れるという認知症を出現させます。そしてさらには顔さえも忘れてしまうようになります。では配偶者に不満を持ったままで人生を送った場合は如何でしょう。この場合は、不満の大きさで配偶者に対する症状が変わります。
(1)配偶者への不満が極めて大きい場合
配偶者への嫌悪感が強く、顔を合わせるのも嫌がります。暴言を吐き、暴力的な行為に至ることがあります。
(2)不満が(1)よりは小さい場合
「家に泥棒がいる」「お金を盗る人がいる」などと言って、配偶者を追い出そうとします。配偶者は悪い人なのです。
(3)不満が(2)よりさらに小さい場合
「変な人が居ます。家から出て行ってもらいなさい」「あなたはなぜここに居るのか。早く帰りなさい」と、この場所を去ってもらおうとします。配偶者を家から追い出そうとします。
(4)不満が(3)よりさらに小さい場合、そして世話になっていることを多少は理解している場合
配偶者を「お手伝いさん、介護者」と表現します。配偶者を「他人」にしていますが、自分の家にいることを許しています。攻撃したりすることはなく、ただ「配偶者」としての資格を否定しているだけです。
(5)不満が(4)よりも小さい場合
この場合が相談例のお父上に該当する不満の程度と思われます。
つまり「現在の妻に比べれば、昔のまだ若い頃の妻は素敵だった。あの頃の優しい妻が懐かしい。昔は良かった」とお父上は最近考えることが多かったようです。すると、優しかった妻と、多少は不満があるが世話をしてくれている現在の妻が同時に存在することになります。現在の妻に対しての不満は小さなものか、または最近出現した出来立てのホヤホヤの不満です。これは、一緒に生活している妻をお父様が否定されないことから考えられることです。
このように自分の都合のよいように考えてしまうことや、都合のよいように周囲が見えてしまうのは、ある種の老年期認知症の中期の症状です。(この時期ならまだまだ改善の余地は残されているものです)。
では最近の生活の中での小さな不満、または出来立てのホヤホヤの不満とは何でしょうか。恐らくは、最近忘れっぽくなり、ミスも多くなったご自分の夫に、お母様が『批判、注意、忠告、指示、命令、叱責、愚痴』などを繰り返されたのではないかと考えられます。お母様はご自分の夫にもっとしっかりしてもらいたい、いつまでも元気でいて欲しいと願うあまり、つい前述の『注意など』を繰り返されたのではないでしょうか。
私たちは高齢になるほど周囲の人たちからの『批判、注意、命令、叱責、愚痴など』に対応することが困難になるようです。特に認知症に陥った高齢者には、これらの言葉はお年寄りの心を棍棒で叩くのと同じようなダメージを与えてしまうようです。叱咤激励などはお年寄りを混乱させてしまう結果となるからです。
如何でしょうか。あまりまとまりのいい結論ではありませんが、お父上への対応をお分かりいただけることを願っています。 |