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 新年、おめでとうございます。年も新たまり、病棟も新しくなったのを契機に、スタッフ一同も心を新たにして、よりよい看護・介護を目指して頑張りますので、今年もよろしく御協力お願いします。

 さて今回はいつもの症例検討に代えて、縁あって私と知り合いになり、皆さんも良くご存知の65歳の男性S・Tさんの、少年時代のエピソードをご紹介させて頂きます。
 太平洋戦争が終わり、軍人だったTさんのお父さんが外国から帰ってくることになりました。Tさんは当時まだ小学生だったので、ここではT君と呼ぶことにします。その知らせを受けてお母さんが、疎開先の田舎から東京まで迎えに行きました。そして、やせていて、何かひどい病気のようなお父さんを連れて戻ってきました。そんなお父さんでもT君にはとても頼もしく思え、嬉しくなって元気が出ました。

 その頃、T君には欲しいものがありました。それは絵の具でした。図画の時間に必要なのです。しかしお父さんのいない疎開先では、知恵遅れの妹を抱えたお母さんがお手伝いさんとして働くなど、大変貧しい生活でした。だからどんなに絵の具を欲しくても、お母さんに「買ってほしい」などとはとても言えるものではありませんでした。しかし今度はお父さんがいます。
 T君は、「よし、お父さんに買ってもらおう」と決心しますが、すぐに言うのはためらわれたので、数ヶ月先の自分の誕生日に言おうと決めました。しかしその日が近付くに連れて心配になってきました。肝心のお父さんが毎週1回、東京の病院へ薬を貰いに通っていて、仕事にも付けない状態だったからです。

 そして誕生日が数日後に迫ったある日、T君は言いました。
「父さん、僕は絵の具が欲しいんだ。色の1番少ないのでいいから、誕生日に買ってくれるよね」
 それだけ言うとT君は、その場にいてはいけないかのように外へ出てしまいました。残されたお父さんは何か言いたそうな顔をしていました。
「買えない理由なんて、僕は知らない。僕には関係ないんだ。僕はクラスで1番成績がいいんだ。絵の具があれば絵だって上手に描けるんだ。勉強だって頑張ってきたし、ずっと我慢してきたんだから、今度こそ買って貰うんだ」

 歩きながらT君は心の中で何度も自分の主張を繰り返しました。しかし絵の具を持っていない子はT君の他にも数人いるし、先生は絵の具で描くことを生徒に求めたわけではありませんでした。
「あの子たちは成績も良くないんだから、絵の具を持っていなくてもいいんだ。だけど僕は違う。上手に描く自信があるんだ」
と、T君は自分に都合のいいように理由付けをしていました。
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