1/2

 今回の症例検討では、93歳のAさんと82才のBさんのお二人の女性の症状を比較検討しながら、私たちは自分自身の老後のために何をなすべきか、と言うことについてご一緒に考えてみようと思います。


 AさんBさんも同じくらいの認知症程度です。最近のことも、昔のことも忘れてしまっています。計算などまったく出来ません。自立して行動する能力もほとんどありません。日本語も忘れてしまっています。何かの拍子にふと言葉が出ることもありますが、そんなことはめったにありません。
  認知症程度はお二人とも大変な重度と判定できます。
 このお二人の言動(症状)の違いは、それはほんの少しなのですが、少し大げさに拡大して話を進めさせていただきます。

 お二人の症状の相違点 

1.Aさんは、私たちの話し掛けに注目してくれます。視線が私たちをとらえていてくれます。
  Bさんは、一瞬私たちに注意を払うのですが、すぐ自分のしたいことのほうに関心はいってしまいます。歩いて行ってしまいます。その場を立ち去ってしまいます。

この違いは、私たちに対しての仲間意識の大きさの違いでしょうか。仲間(集団)への参加と協力の第一歩の姿が残されているか、いないかということになるのでしょうか。
  群れ作って生活することは安全の確保、生命の確保・維持の大きな条件です。

このような状態に至る少し前のお二人の様子は、次のようなものでした。

2.Aさんは、会話は成立しないのですが、お菓子などもらうと「ありがとう」を言うことができました。
  それでも、貰ったことをすぐ忘れてしまうので、食べ終ったあとでお礼の言葉を言うことはできません。Aさんは、他人の優しさに感謝することはできるようでした。
  一方、Bさんは多分に条件反射的ではあったかもしれませんが、差し出されたお菓子に手を伸ばすことはできました。
  しかし「ありがとう」の言葉は口にされません。Bさんは自分にとって都合のよい他人の行為を理解することはできるようでした。

3.さらにもう少し前の時期について述べてみましょう。
   Aさん
は相手の言っていることが分からなくても、ニコニコしながら会話を成立させようとしていました。他人と仲良くしようとする努力があるようでした。
  Bさんも相手の言っていることが分からないのですが、行動を止められたりすると反抗的になりやすかったのです。他人を認めることよりは、他人を否定する傾向が強く出ていました。

次へ進む