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ここでは鑑定の結果を云々することは差し控えて、次のようなケースを想定して述べてみましょう。
<シーン1>
質問者がOさんのような状態の人(仮にSさんとしましょう)に遺産相続についての確認する場面です。
Sさんには三人の娘(甲・乙・丙)がいますが、相続を有利に展開させたい甲・乙二人だけが集まっています。
質問者「Sさん、今日は遺言書作成の件でお集まりいただいていますが、よろしいでしょうか」
Sさん「はい、よろしいですよ」
質問者「遺言書とはどういうものか、お分かりですね」
Sさん「はい、分かっています」
質問者「では相続の対象となる財産を確認します。
一、土地について云々
二、建物について云々
三、・・・・・・
四、・・・・・・
五、その他云々
以上です。よろしいですか」
Sさん「はい、よろしいです」
質問者「では以上の財産を含むSさんの遺産全部を娘さん甲・乙のお二人に各二分の一の割合で相続させてもよろしいですか」
Sさん「はい、よろしいです」
甲・乙「お母さん、有り難う。本当に有り難う。」
Sさん「お前達にはお世話になっているから、財産をあげるのは当然ですよ」
以上のような会話がなされました。往々にして質問者は、これでSさんに意志の疎通 が十分に保たれていると考えてしまいます。
実際は、Sさんの認知症状態がかなり進行していて、
1. 遺言とその結果の性質を理解する能力
2. 自分の財産の性質と規模を想起する能力
3. 子供たちの名前、および彼らの相続に対する要求を想起する能力
4. 遺言者の自然な感情を曲げ、その決断に影響する病的精神状態でないこと
などに重大な欠陥があることを見落としています。つまり、
1では、遺産の配分に際して、遺言公正証書作成の現場にいる子供たち(甲・乙)にのみ遺産が配分されることの結果に、Sさんの思いが及んでいないこと
2では、財産目録については、Sさん自ら財産の性質と規模を想起する能力がないこと
3については、子供の一人である丙さんの要求を想起する能力がないこと
4については、遺言の決断に影響する病的精神があること、すなわち認知症があり、どう良く見ても四〜五歳以下の知的能力であること
などを見過ごしています。
<シーン2>
私たちの病院での経験では、かなり認知症状態が進行したお年寄りでも、私たちが使用した言葉でなら、返事が可能となることを知っています。例えばリンゴを見せて「これは何ですか」と質問すると、「・・・?!」と答えられないお年寄りでも、「リンゴを食べますか」と話しかけると「リンゴを食べます」または「食べます」と返事をすることが可能です。最初に「これは何ですか」の質問がなければ、そのお年寄りがリンゴを忘れてしまっていることに気が付きません。
もう一度、前述<シーン1>の質問者とSさんのやり取りの中での太字部分を見て下さい。Sさんの返事は質問者の言葉と同じで、いわゆる鸚鵡返しです。
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