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今回の症例検討は、63歳の女性であるOさんの場合を考えてみましょう。
Oさんは、平成8年5月、顔面のしびれ・頭痛・倦怠感に加えて「寒気がするので病院へ連れて行ってほしい」と長男宅へ電話がありました。A病院へ入院しました。肺炎を併発していました。意識不明となりました。診断は左右側頭葉から小脳までの広範囲にわたるヘルペス脳炎とのことでした。
「胸が苦しい、息苦しい」などの訴えが多く、また落ち着きなく、一か所に1分以上座っていられない、1日に100回以上トイレに通うなどがあり、一か月後にB老人施設に移りました。
B老人施設では、食べられないものを食べてしまうなどの異食行為が出現し、しだいに夜間の徘徊が著しくなり、昼夜とも不穏状態となりました。暴力を振るうこともあり、薬剤(安定剤)を使用したところ、歩行もふらつきが目立ち、危険がともなうようになりました。
平成8年9月、Oさんは御殿場高原病院へ入院となりました。
入院時の症状は、薬剤の過使用のためか眠そうで、会話は中断しがちでした。父親や夫の職業などわかりません。ただ「苦しい」の訴えが繰り返されました。認知症状態は中程度から重度への境界くらいに判定できました。
「苦しい」「助けて」「寝かせて」「毛布をかけて」「甘いものちょうだい」、一日中食べ物を要求するなどの状態が一進一退を続けていました。しかし、それから7か月、一応の小康状態を得て退院となりました。
平成11年10月、Oさんが退院後入所しているB施設から連絡がありました。
「歩き回っている。落ち着かない。手に負えない状態」
とのことでした。Oさんは顔面蒼白、顔に紫色のあざができていました。冷たい表情をしていました。話し掛けても返事をしてくれませんした。
Oさんは再び入院となりました。前回入院時より認知症状態は進行しているようでした。トイレでの衣類の上げ下げや、便座に腰を掛けることなどが理解できません。歩き回ることが多く、特に夜間がひどいようでした。
その後の入院生活の中で、当院の看護婦や介護スタッフの優しい人たちに対して、甘えを見せるようになりました。次第にOさんの表情に活気が出てきました。拒絶的な様子は激減しました。入浴時など介護者に「もっと優しくやってください」などと言うことができるようになりました。食事摂取量、睡眠量も回復し、顔色もよくなりました。
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