グル−プ[6] 中程度認知症状態(後期)


 前の[5]の段階で、お年寄りが要求したこと・願ったりしたことが、子供たちや周囲の人達から気付かれなかったり拒否されたりすると、お年寄りは訴えるのを諦めます。そしてお年寄りは自分自身へ慰めの言葉・あきらめの言葉・気を紛れさす言葉をかけるようになります。願いごとをあきらめてはいけないとの励ましの言葉をかけるときもあります。自分の立場をわかってくれる人を作り上げたり、呼び寄せたりして、訴えを続けたり、同意を得たりの話し掛けもします。この時、同じ言葉が繰り返されます。

 周囲の私たちから見れば、お年寄りは『独りごと』を言っているようにしか見えません。認知症症状としてはあきらめとなぐさめの時期と言えるでしょう。 この独りごとの繰り返しが行為に置き換えられると、トイレットペ−ペ−やゴミ・スリッパなどにこだわって集めたり、蓄えたり……となります。荷造りをしたり解いたりなどの繰り返し、同一行動の繰返し(常同行為)となります。したがって同一行動の繰り返しは、お年寄りが願っていたことを聞き入れられなかった時の諦めの行為であり、また願いごとを実現化しようと努力を続けている行為でもあります。

 また、子供の代わりとして集めたものを身の回りに置き、子供と一緒にいるような安心した気持ちになっている行為でもあります。願い事が実現した時の充実感を味わう空しい代償行為でもあるのです。「一人でブツブツ言っていて気持ち悪い」「またスリッパを盗っていってしまった」「夜も寝ないでタンスの整理をしている」などの理解の仕方と対応では、お年寄りは最後まで私たちから見放されたままということになります。

 さて、お年寄りの『生命』が持つ生きるための条件としての「バランスのとれた生活をしたい」という考え方は、この[6]の段階でほとんど失われます。お年寄りに残されたこの後の[7]・[8]・[9]・[10]段階の日々は、野球のペナントレ−スを例にとれば、優勝・準優勝のチ−ムがすでに決まった後の、単なる消化試合みたいな日々と同じようなものとなってしまいます。

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