グル−プ[2] 生理的脳機能の低下(後期)


 前段階のグル−プ[1]の状況での生活を続けていてはよくないことを、お年寄りはからだで感じていられます。したがって生活の改善をはかろうとします。「これではいけない」と不安もつのってきます。またお年寄りのからだも、お年寄り自身に改善の断行を促します。

 しかし、お年寄りは往々にして改善に失敗します。長い間の習慣になってしまっている生活様 式を、今更、変えることは出来ないのです。お年寄りには理解してくれる協力者がいないこともこの失敗の大きな原因になっています。

 また、お年寄りと若い人たちとの間の運動能力や心理的なものの差異を認識していないご家族が多いことも大きな原因となっています。例えば、この差異についての例を下表にあげてみましょう。同じものを見ても、同じことをしてもその感じ方は、お年寄りと若い人の間に次のような驚くほどの差異があるのです。

客観的な事・物 若い時 老年期
5kg
5kg 10kg
小荷物 小荷物 大荷物と感じる
100m 100m 500mに匹敵
300m 近距離 遠距離となる
なだらかな坂 なだらかな坂 けわしい坂
40km/時 自動車の遅いスピ−ド 自動車の早いスピ−ド
階段20段 20段 50段に相当
3階での火災 3階の火災
(何とかなりそう)
6階の火災
(どうしようもない)
低い 低い 高い
普通の部屋 明るい部屋 暗い部屋(よく見えない)
活字の印象 辞書
ハイキングで 涼しい夏山 寒い冬山
吠える犬 雄々しい犬
感冒の経過 感冒 肺炎(感冒はすぐ肺炎へ移行)
病気への不安 他人の病気 自分の病気(自分もなりそう)
焼き肉を食べる時 焼き肉 スルメの硬さ (噛めない)
新製品 興味をそそる製品 わからない製品
失敗への不安 他人の失敗 自分の失敗
(自分が失敗したらどうしよう)
死への不安 他人の死
(自分はさしあたり死ぬことはない)
自分の死(次は自分)
悪いことへの不安 他人の次は他人(凶事) 他人の次は自分
貯金10万円引き出すことへの不安 貯金額が10万円少なくなるだけ 財産を100万円失うこと
会話 普通の会話 無愛想に話される会話
注意・忠告をされること 注意・忠告をされる 叱責・意地悪をされる
親子関係の中で 間違い・失敗は許せない 許されてもいい
親子関係の中で 親に対し一応のことはしている 子供のことを考えると淋しい

 グル−プ[2]は、以上のような状況下などで起きてくる症状をあげてあります。『自己の拡大化と失敗』の時期の症状です。グル−プ[2]では該当する項目があっても、それだけでは「認知症状態にある」とはまだ言えません。

 しかし、そのままの状態が続けばやがてお年寄りは[3]へ進んでしまわれます。お年寄りを乗せた『老化』という車は、ある穏やかな下り傾斜の道をこの時点では動き出しています。先にあるのは『認知症』という更に傾斜の強い、暗い谷間です。私たちがお年寄りが願うような生活作りに協力しさえすれば、お年寄りは落ち込もうとしている『認知症の谷』を、大きく迂回することができます。

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