2007年10月号より〜高齢者医療の行方〜

介護支援専門員 楢木博之

 安倍首相の突然の辞任から、福田内閣が発足しました。政界の動きが毎日のように新聞紙上を賑わしています。私も政界の激動にただ驚くばかりでした。皆様もこの動きに興味・関心を持たれた方が多かったのではないでしょうか?
 さて、福田内閣になってから、「高齢者医療負担増の凍結」を検討していることをご存知でしょうか?今回は、この点について述べ、これからの高齢者医療の行方を考えていきたいと思います。
 福田内閣になってから、政府与党が検討している「高齢者医療負担の凍結」の具体的な中身とは何でしょうか?「@70〜74歳の低所得者も含む高齢者の医療費の窓口負担を1割から2割へ引き上げるA後期高齢者医療制度の創設に伴い、75歳以上の一部に新たに保険料負担保険料負担が発生」を凍結しようとしているのです。
 @Aの制度は、昨年の6月に決定した医療制度改革関連法の一部になります。凍結という動きがなければ、来年の4月から二つとも実施される方向で動いていました。この凍結案は福田首相が自民党総裁選での公約に掲げてから、公明党が支持をして政府与党内に広がったものです。安倍内閣の時には、凍結の議論など聞いたことがなかったので、私も一連の動きに驚いている状況です。国民の側から考えれば、病院での窓口負担が上がり、高額な保険料を払わなければならなくなることは、自己負担額が増えることになるので、凍結の動きは「嬉しい話」とも言えます。
 しかし、手放しで喜んでいいのか?と疑問も感じています。今回の負担凍結が、今後、国民に大きな皺寄せが来るとしたら、手放しでは喜べないのではないでしょうか。現に凍結した場合、その財源は1,700億円必要とも言われています。そのお金は当然、国民の納めた税金からになります。高齢者医療は今後も増加が予測されますから、どこまで税金で賄えるのか疑問です。
 そもそも税金で賄えなくなったから、昨年の6月に制度改革を行ったのではなかったのでしょうか?そう考えれば、財源が足りなくなった場合、また窓口負担の引き上げ、新たな保険料の徴収が議論されるでしょう。そして、国民全員に影響が出る消費税の引き上げの議論がより活発化するでしょう。(消費税の引き上げは、現在、年金とセットで議論されていますので、その話題は次回お話します)
 目の前にある選挙のためだけに、今回の凍結の議論が行われるのであれば、その皺寄せはすぐに国民負担として押し寄せるのです。
     先日、厚生労働省の方の話を聞く機会があり、その報告がとても印象に残りました。報告の中で、2040年に生まれてくる子供の数は50万人、一方で死亡者数は166万人と予測しているそうです。2005年の出生者が109万人、死亡者は109万人でした。35年後は、生まれてくる子供の数よりも亡くなる人の数が3倍になる社会とはどのようなものなのでしょうか?この時の人口は3人に1人が65歳以上と予測されています。この状況では、人口減少の問題だけではなく、その時の高齢者医療にも大きな影響を及ぼすでしょう。
 今後の人口の将来予測だけを考えていけば、高齢者医療政策も目先ではなく中・長期的な対策が必要になります。これを政治家任せにするだけではなく、国民も理解し、議論に加わっていく必要があるでしょう。
 今年7月の参院選で、国民の声が政治に影響を与えることを実感しました。私たちも、福田内閣の行方を見守りつつ、今、何が起きているのか関心を持つことが大切だと思います。まずは現在議論されている「高齢者医療負担の凍結」の行方に注目してみてはいかがでしょうか?
 次回は年金についてお話したいと思います。