2006年10月より〜教授インタビュー〜
インタビュアー 高橋慎一郎
〜清水允煕教授に聞く〜
 清水允煕先生は認知症の治療に取り組んで約30年のキャリアがあります。
 その間に「認知症」の多数の症例に基づいた経験から独自の理論を発表されています。
 その骨子は『生活史型認知症』です。
 そして本紙の冒頭でご紹介した書物「認知症」三部作を今年「黎明書房」より上梓されました。
 また、清水先生は次代を背負う若い人たちの教育にもご熱心で、山口県の宇部フロンティア大学・大学院の臨床教授を拝命。
 海外では、中国に招聘されて、中華人民共和国の華中科技大学・同済医学院ならびに湖北中医学院、湖北民族大学のそれぞれから客座(員)教授に任命されて年に数回渡中して講演・講義などを行っております。最近では、北京の中医科学院・望京医院にも客座教授として出かけて中国でも活躍しています。
 今回本紙では、その先生の教育にかける情熱と理論、さらにキャンパスでのエピソードなどを含めて忌憚のないお話を伺いました。

本紙ー先生は教育になみなみならぬ情熱をお持ちですが、教育を志して大学院の教授になられた動機について
清水教授ー今日の認知症の研究については、「遺伝子」の研究と「神経細胞とその周辺事情」についてなどが中心となって研究されています。これは世界的な傾向でもあります。
 しかし、この研究成果が実際の生活の中で、われわれの認知症の改善に好結果をもたらすまでには、まだかなりの年月を要するものと思われます。
 そして、それまでの現実の生活のなかでの認知症の対応が不十分なものでは困ります。
 ところで、われわれの「認知症」は、大きく分けて、次の3種類の原因をもって発病していると考えられます。
1. 先天性を持つ遺伝子(DNA)上の問題で、認知障害を起こす場合があります。典型的な例が、アルツハイマー病です。
2. 脳梗塞、脳内出血などの脳血管の障害や薬物中毒による後遺症として出現してくるものがあります。
3. 老化現象の最終的な脳機能の低下崩壊により出現してくる場合があります。
 分類の仕方によってはもっと細かい分け方も可能でしょうが、現実の生活の中で、認知障害を回避しようとするときには、以上のように考えるのが分かりやすく、対応も講じやすい分類と思われます。
 そこで私は老化現象の最終的ステージに出現してる3の場合の認知症、つまり『生活史型認知症』について報告してあげようと思い学生に接しています。
 何故なら、この3の場合の認知症は、その人の長い人生での考え方、つまり、人との関わり方、仕事との関わり方、自然との関わり方、両親、配偶者や子どもたちとの関わり方に影響されて、出現時期を早めたり、遅めたりして現れてくるものだからです。
 つまり、本人と両親・子供たち・友人たちの間の配慮、つまり優しさが問題なのです。認知症の症状が、このことを示しているのです。
 したがって、若い学生諸君が、まだ若いご自分たちのご両親に、今からこの考え方で対応されれば、ご両親は認知症を最大限に避けるという最高の贈り物が出来ることを、教えてあげようと思いました。
本紙ー具体的には、どのようなことを話されたのですか。簡単で結構なのですが、教えて頂けませんか。
清水教授ーそうですね。学生諸君には、「自分よりも、自分の親を大切にしてくれる人と結婚しなさい」ということでしょうか。
 陽明学者の中江藤樹が言った言葉に
「天・地・人・万物などの真理を理解する能力は、親に孝行することによって得られる」
とありますが、この言葉をあなた方が本当に理解出来れば、あなた方のご両親は認知症を最大限に避けられますということです。
本紙ーなるほど。
清水教授ー遺伝子の何番目にアルツハイマー病の原因があるとか、βアミロイドが云々などということは、現在の段階では、私たちの生活のなかでの親への対応には応用することが非常に困難です。
 したがって、出現している症状から対応を考える方が的確なのです。このことを教えています。
本紙ーそれでわかりました。清水教授の講義が学生に人気がある理由が。
 やはり、自分たちの親が認知症になったとき、あるいはなりそうな状態のときに、どのように対処したらよいのかに興味を持ったのでしょうね。
 私は教授の机の上に置いてあった学生の『ハート型の寄せ書き』を何気なく見たのですが、多くの学生が子供のように教授に接しています。大変な信頼感の上に成立する在り方です。
 今度の本紙上にそれを掲載したいのですが。いかがでしょうか。
清水教授ーええ、どうぞ。
 その寄せ書きは、私の最終講義のとき学生からいただいたものです。熱心で何の気取りもなく、純真な学生たちからです。
 このような学生と一緒に勉強できたことを誇りに思っています。
本紙ーもうひとつ質問したいのですが、中国での講演等についてです。
清水教授ーそれは次回ということにさせていただきましょう。
本紙ー今回は有難うございました。お忙しい時間をさいていただき感謝致します。
清水教授ーどういたしまして。