| 介護支援専門員 楢木博之 | |
| 前回号で取り上げました介護保険制度改正について、今回も引き続き説明したいと思います。今回は、制度改正に至った背景を中心に、お伝えできればと思います。 前号で書きましたように、介護保険制度は5年ごとに見直しを行うことになっています。ですから今回の改正は、制度成立後初めて行う改正ということになります。内容は、これまで5年間の制度の状況から検討することになります。これまでの制度の課題を明確にし、それをふまえて改正の中身を決めていく、ということです。では、制度が5年過ぎてどのような課題が浮かび上がってきたのでしょうか。 介護保険施行後見えてきた課題として 1:要介護認定者の増加、軽度者の増加、2:在宅ではなく施設志向、3:居住型サービスの飛躍的伸び、4:施設サービスの個人ケアへの取組、5:課題の多いケアマネジメント、6:認知症高齢者ケアの重要性、7:介護サービスの質の課題、が挙げられます。これらを少し説明していきます。 1「要介護認定者の増加、軽度者の増加」ですが、2000年の介護保険当初の要介護認定者と2004年とを比較すると、約2倍近く、要介護認定者が増加しています。その中でも要支援・要介護1のいわゆる軽度の方々の伸びが著しく、2倍以上増加している状況です。そして要支援・要介護1になった原因を見たときに、一番多かった疾患として廃用症候群(生活不活発病)という結果でした。これは簡単に言えば、体を動かしていないので筋力が衰えて要介護状態になってしまった、ということです。この結果は、要介護状態にならないようにするという予防がうまくいっていないと判断することができます。ですから今回の改正で、介護予防を重視していくことになったのです。廃用症候群にならないように、介護保険で予防をしていきましょう、ということです。ですから現在、パワーリハビリテーション、筋力トレーニングが叫ばれているのです。 2「在宅ではなく施設志向」についてですが、介護保険法は本来在宅を重視しているのですが、制度が始まってから特別養護老人ホームの入所が増えてしまったのです。この背景として、前回号でも書きましたが在宅と施設の費用負担の不均衡が要因として考えられます。在宅で生活するよりも施設で生活する方が、費用負担が安いのであれば、施設への入所希望が増えるのは必然の結果かもしれません。この問題を是正したのが、本年10月から開始した施設の食費・居住費を保険支給から外し、自己負担を求めていくことになったのです。 3「居住型サービスの飛躍的伸び」についてですが、グループホームや有料老人ホームの数が増えたということです。グループホームに至っては、2000年当初全国で200施設くらいしかありませんでしたが、現在では4000から5000施設近くまで増えています。わずか5年で実に20倍近く増えたのです。グループホームや有料老人ホームは、これまでの集団処遇の施設と違い、個別的処遇を行うことが可能な生活環境になります。ですから在宅環境に近いサービスということで、現在特に注目されています。今後は、これらのサービスが地域で行われるように、地域密着型サービスとして位置付ける方向です。そうなるとグループホームや小規模の有料老人ホームを利用することができるのは、地域住民に限られてきます。ですからより一層、地域の中でサービスが提供されていくことになるのです。 4「施設サービスへの個別ケアへの取組」についてですが、これまでの施設における集団処遇の反省から、施設内でも個別ケアを行っていくように動き出した、ということです。具体的な取組としては、特別養護老人ホームが完全個室ユニットケアを取り入れました。完全個室ユニットケアは、部屋は個室で、さらに1フロアを10人程度に分けて処遇を行う生活環境になります。ですからこれまで1フロアに50人近くの入所者がいて全てを見ていかなければならなかった集団処遇ではなく、一人一人個別に関わっていくことができる生活環境を作ったのです。現在、新設されている特別養護老人ホームは、ほとんどが完全個室ユニットケアになります。そして今後、介護老人保健施設、介護療養型医療施設もこれを取り入れていく所が増えていくと予想されます。 5「課題の多いケアマネジメント」についてですが、介護支援専門員(ケアマネージャー)の課題です。在宅の介護支援専門員をしている私にとって耳の痛い話なのですが、適切なケアマネジメントが行われていないので、過激なサービスを利用しているのではないか、それが保険財政を圧迫してしないか、という課題です。ここで問われているのは、介護支援専門員の質です。ですから今後は、介護支援専門員の資格を更新制にしていくという話が出ています。更新性にして、質を高めていこうというねらいがあるのです。 6「認知症高齢者ケアの重要性」についてですが、この点については次回の号で詳しく説明したいと思います。増え続ける認知症高齢者の国の対策などを踏まえて、お伝えしていきます。 7「介護サービスの質の課題」についてですが、介護保険制度ができたことにより数多くの民間事業所が介護に参入してきました。これは先ほど説明しましたグループホームの急激な伸びにおいても明らかです。その他にもデイサービスやホームヘルパー、福祉用具などにおいても民間事業所の参入が目立っています。皆様もそれは実感できているのではないでしょうか。サービス事業所が増えれば、当然働く職員も必要になります。皆さんも介護サービス事業所の求人広告を目にしたことがあるのではないでしょうか。ですから介護福祉の養成学校など福祉の大学、専門学校が増えているのです。しかし急激に増やすということは、当然職員の質に課題を残すことになります。職員の質の向上については、今後も力を入れていくことになると思います。 以上が、介護保険制度施行後に見えてきた課題と今後の方向性です。今後の方向性が、来年4月から行われる改正介護保険法の中身にもなります。まだ詳細が出ていないところがあるので、詳しくは説明できなかったことをご了承いただければと思います。 最後に、もう一つ改正の中で重要な点を説明します。それは被保険者の範囲についてです。現在、介護保険の被保険者の年齢は40歳以上になります。ですから40歳未満の人は保険料を払っていません。保険料を払っていませんから当然、保険給付(サービス)を利用することはできません。しかし今後、この年齢の範囲を見直そうという動きがあります。その背景には介護保険財政の影響があります。制度を持続していくためには財源の確保が大きな課題になります。その課題を考えた時に、65歳以上の方々の保険料を高くしていくことは困難です。であれば、下の世代からも保険料を集めていく、という話が出てきます。今後、介護保険制度の被保険者を20歳までに下げるかどうか、という議論があるのは事実です。20歳の若い世代に介護保険制度を理解してもらい、保険料を払っていただけるか、大きな課題でしょう。若い世代にも介護保険が利用できるように、と介護保険に障害者のサービスを入れていこうという動きもあります。いずれにしても今後の介護保険は、来年の改正だけに留まらず、目まぐるしく変化していくことになるでしょう。我々、国民はその動向に目が離せないのは事実です。 |
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