ケアマネージャー 楢木博之
 04年9月10、11日の2日間、札幌市にて第12回日本療養病床協会全国研究会が行われ、白熱した議論が展開されました。その中で報告のあった介護保険制度の現状と今後について、皆様にお伝えしたいと思います。
 来年5年目を迎える介護保険制度は、大幅な制度の見直しが現在検討されています。発足当初は、保険制度を作っても利用できるサービスがないのではないか、と心配されていたのです。それが今はどうでしょうか。もちろん現在でも完全ではなく地域格差があるのですが、全国的に見るとここ数年で新規のサービスが飛躍的に増えています。その代表的なものがグループホームで、00年当初は200弱しかなかったのが、04年の段階で5000を超える数に膨れ上がっています。グループホームほどの伸びはありませんが、その他のサービスも同様に増えています。これは介護保険制度のねらいであった民間に介護保険への参入を促した成果です。

 もう一つの効果として、制度が利用者に浸透していったことです。当初は保険料を納めることに難色を示す声が多く聞かれました。現在でもこの声が完全になくなったわけではないのですが、申請件数、要支援、要介護者の増加は制度が浸透した結果とも言えるでしょう。
 そしてもう一点、地方分権の推進を図ったということです。介護保険制度の保険者は国や県ではなく、市町村になります。したがって介護保険は市町村次第で良くも悪くもなりえます。実際に先駆的な取り組みを行っている市町村は、充実した介護保険が整備されているのです。
 介護保険の理念の一つでもある地域支援を行うためには、市町村の取り組みが重要なことは言うまでもないでしょう。

 ここまで制度の効果ばかり述べてきましたが、一方では多くの課題を抱えています。厚生労働省は課題を明確にし、来年行われる制度改正の内容を検討しているのです。
 サービス事業者が飛躍的に増えたことは良かったが、悪徳な業者が出てきたり、質の問題が問われたりするようになりました。さらに制度の浸透とともに要支援者・要介護者は増えましたが、必要のないサービスを利用し、逆に自立を妨げているのでは、という指摘もあります。身体は動くにもかかわらず車いすや介護用ベッドを利用したりして、身体を動かさなくなってしまうという悪循環に陥っているということです。これでは介護保険が、何のためなのか分からなくなってしまいます。
 地方分権についても格差が出てしまい、充実した市町村はいいが、取り組みが遅い所もあり、利用者に影響が出てしまうことが必至です。その他、日本の介護保険制度の特徴とも言えるケアマネジメントが上手く機能していないこと、在宅介護を推進すると言いつつ施設志向が強いことなどの課題もあります。
 そしてもう一つ、制度維持に必要な財源の確保が大きな課題になっています。これは今後さらに進むことが予測される高齢者人口の増加に対して、介護給付費がこれまでのように膨らみ続ければ、保険財政自体が破綻しかねないと言う懸念です。
 
 これらの課題にどう対処していくかを現在厚労省で検討しています。改正のポイントとして「介護予防」という言葉がキーワードになっています。これまでの介護保険は介護状態になったらすぐにサービスを導入する、というような考え方でした。その考えが逆に介護状態を進行させてしまっている、という批判から、既に要介護状態の人はそれ以上進行しないようにすることを重要視するようになってきています。市町村によっては、モデル事業で介護予防の取り組みを行っている所も出てきています。「高齢者にも筋力トレーニング」ということで、要介護状態になる前からリハビリを導入しようという考え方です。身体の予防だけでなく、認知症の予防も叫ばれてきました。ここ数年厚労省の肝いりもあって、認知症の研究が目覚しく進歩しています。この先どれだけ認知症の研究が進んでいくかが期待されているところです。

 サービスの質の問題では、事業所の情報開示の推進、専門性を重視した人材育成を充実させるという動きになっています。特に介護職員は将来「介護福祉士」を基本にしていくことも検討されてきています。これにより一定の教育を受けたものしか介護ができないというシステムを構築し、質を向上させたいというねらいがあるのです。

 最後に財源の課題ですが、膨らんだ介護給付費を抑えるために、ケアマネジメントを体系的に見直していくことが言われています。また財源確保のために対象年齢を20歳までに下げることが焦点になっています。保険料徴収を現在の40歳以上から、20歳に引き下げればその分収入は上がります。しかし若い世代に保険料を求めるには、若い人でもサービスを受けられるシステムが必要になります。それが介護保険と障害者施策の統合という話題になっているのですが、厚生労働省は今年中には結論を出したい意向のようです。

 以上が介護保険制度の現状と今後の報告です。介護保険制度が現在、過度期であり来年、再来年で大きな変革があることは間違い有りません。その外にもまだ改正のポイントはたくさんあります。それは後日、稿を改めてご報告をしたいと思っています。