| ケースワーカー 保科光俊 | |
| 当院での治療でAさんの認知症は改善しました。入院前は街を徘徊し、表情もなく寡黙だったAさんが、笑顔も多く、生活の計画を立てられ、希望をもった毎日を送れるようになりました。 私から病室へ会いに行けない時はAさんが相談室へ来てくれます。「こんにちわ、いるかな?」と私を探します。「あっ、いたいた。何してるの、仕事?大変だね」と労をねぎらってくれます。「ありがとう。Aさんが来てくれたからもっと頑張れそうだよ」と私が言うと、照れたような表情をされます。そのような時は一緒にコーヒーを飲みながらゆっくりお話をします。「そろそろ部屋に帰らないと心配するからね」と言われ、自分の部屋に行く。私が一緒に行こうとすると「仕事あるんでしょ?一人で帰れるよ」と言われ、相談室は2階でAさんの部屋は3階ですが、一人で帰ることができます。このように周囲への配慮や気を遣うことができるようになりました。 Aさんと私の関係は患者さんとケースワーカーですが、Aさんは私を友達のように、また恋人のようにも親子のようにも感じているようです。「結婚しているの?いつ結婚するの?いい人見つけなさいよ」と何度も言われます。「Aさんみたいないい人はなかなかいないですよ」と私が言うと、照れた表情をされます。他のケースワーカーが結婚してもいいのかと聞くと「やっぱり心配だからね」と言われたそうです。 治療経過も良好で、次のステップとしてグループホームへ入所されることになり、当院を退院されました。ホームへ入所して間もない頃、不穏状態がみられ、何度か訪問にいきました。 入所当初は「前居たところに帰りたいよ」と言われました。「Aさんにとって『帰りたい場所』とは、かつて一人暮らしをしていた所でなく御殿場高原病院になっていたのです。『帰りたい場所』とは安心できる場所であり、自信をもって生活ができる場所なのです。自己実現と存在価値とも言い換えられます。 グループホームの職員さんと協力し、特効薬を処方しました。それは『協力者』という特効薬です。グループホームとの連携により次第に落ち着いてきています。また1週間に1回は外来受診で当院に来られます。その時は必ず私に会いに来てくれます。私が不在の時は置手紙を残されます。その一部を紹介しましょう。 『今日は保科さんはお休みですね。私がきたのに私がきたのにどをしていないのようねい。私がまっていますから。今日はなにをして到ますか』(原文のまま忠実に書いたので誤字脱字ではありません)。これは最近の手紙です。当初は「憂鬱ですよ」「さよなら」などという言葉が多く書かれていました。電話もたまにします。入所当初は「帰りたい」との訴えがずっと続きました。しかし現在では「今日は買物の日なの、これから行ってくるからね」と言いAさんから切られます。グループホームに優秀な協力者がいるからAさんは良い状態になれたのです。当院で行なった治療方法を退院後にも生かしていただけるように、グループホームと綿密に連携をとりました。 このように『協力者』の輪が広がってきています。薬には適量がありますが、この特効薬には適量はありません。多ければ多いほどいい無限の特効薬です。今後もAさんがより良い希望と夢が持てるように援助していきたいと考えています。 |
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