| ケアマネージャー 楢木博之 | |
| 最近、マスコミで『介護保険』の話題が取り上げられることが多いことにお気づきの方も多いかと思います。それは来年二〇〇五年が、介護保険発足以来五年目の制度見直しの時期に当たるからなのです。 その見直しの焦点になっているのが、保険料の徴収を現在の四十歳から三十代、二十代に引き下げられないかということです。そして保険料徴収年齢を下げるために、障害者福祉と一体化させてはどうかという議論が、今新聞紙上を賑わしているのです。 介護保険料の徴収年齢を引き下げる話題は、早くからありました。これからの日本は超高齢社会を迎えます。多くの高齢者を少ない若い世代が支えていくということになっていきます。そうなると介護保険の対象者は増えていき、保険の支出も増える一方です。当然ながら、今後保険の財源を安定させていくことが課題になります。 介護保険財源の安定は、今後の介護保険制度の大きな課題なのです。では、財源を確保するためにどうすればいいかとなると、被保険者からの保険料の徴収を増やすという方法になっていきます。そうなると高齢者からの保険料を多くするということは難しいので、四十歳より若い人から保険を徴収し、財源を確保したいという流れになります。 しかし、財源確保だけのために保険徴収の年齢を下げることには、当然国民からの反対が起こります。特に若い世代では、今話題になっている年金に強い不信を抱えていて、国民年金にもかかわらず、多くの人が未納という状況です。その中でこれから介護保険料を徴収しますと言った時に、反発は必至です。若い人にも保険を利用できるという制度にしなくては、理解を求めることはできません。三十歳でも要介護状態になれば介護保険を使えるという制度にする必要があります。ですから今話題にあがっているのは、介護保険を高齢者だけでなく障害を抱える人たちも対象にできるような保険にしてはどうかという議論なのです。そこには障害者の現在の福祉の状況にも影響があるのです。 平成十五年から身体障害者・知的障害者には支援費支給制度が始まりました。障害者も高齢者の介護保険と同じように、利用者が選択できるような制度にしようという動きでした。しかし財源は保険ではなく、国と自治体の予算で賄われます。問題になっているのは、各市町村によって使えるサービスに格差が生じてしまっていることです。そして税金だけでは今後の財政を確保することが難しいと言われています。精神障害者においては、支援費支給制度の対象になっておらず、また利用できる社会資源についても他の障害者よりも少ない状況にあります。その中で障害を抱えた人たちのサービスを広げていくためには、介護保険で一本化して財源を確保し、障害者の福祉を充実させたいというねらいもあるのです。 もちろんこの意見には反対意見も多く聞きます。この問題は今年1年間で議論が続いていくと思います。私個人の意見ですが、もし介護保険徴収年齢を下げて、障害者も含めた対応をするようになった場合、現場では多くの混乱が生じると思います。まず国民側は「はい、そうですか。では支払います」という気にはなれないでしょうか。現実として年金も未払いが多いのが現状です。若い人も保険を使えますと説明しても、若い世代は今自分が介護を受ける状態になるということを考えるでしょうか。考えていたら国民年金の未払いにはならないと思うのです。 以前にもお話しましたが、年金も高齢者になった時に支払われるだけでなく、若くして障害者になった時には支払われるのです。しかし一定の期間保険料を未納にしていれば、障害を抱えても支払われません。にもかかわらず若い世代に未納者が多いのは、若い人たちが自分が障害を抱えるということは全く考えていないということになります。その中で介護保険料を徴収しますよと言っても、「自分達には関係ない」という人たちが多いのではないでしょうか。 そのところを国民に理解できる説明をしなければ、若い人からも保険料を徴収しますということは難しいと思います。またサービス提供側にも混乱は生じるでしょう。介護保険がスタートして、各市町村やサービス提供者もようやく制度が見えてきた、軌道に乗ってきたという状況です。ここで大きな改正をして、対象者を大幅に変えればそれだけでも大混乱になるでしょう。 今までの福祉は高齢者・身体障害者・知的障害者・精神障害者というように区分されていました。このこと事態が問題だという声もありますが、現在の日本はまだこの区分けがはっきりしているのも事実です。その状況で介護保険に全てを含めるという考え方が受け入れられるかという問題が出てくるでしょう。このことは大きな問題です。ですから保険料の財源確保というだけではなく、内容をどうしていくのかという議論がきちんとなされなければ、介護保険制度が危うくなるのではと心配しています。 現状ではまだ決定したことではないので、具体的なことは言えない状況です。要は今後、国がどのような動きをしていくのかに注目していきたいとは思います。 |
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