ケアマネジャー 楢木博之
 昨年、厚生労働省の求めもあり、高齢者介護研究会が、「2015年の高齢者介護」というものを発表しました。その内容を少しご紹介したいと思います。

 まず、なぜ2015年なのかということですが、その年にいわゆる団塊の世代(昭和22〜24年生れ)が65歳以上になります。その時の高齢化率は実に26%になると言われています。2002年の高齢化率が18.5%ですから、いかに大きい数字かお分かりになると思います。現状のままでは対応できない問題も多くなるでしょう。ですから今回、2015年に焦点を当ててお話するのです。

 ではまず、介護保険施行後に出てきた課題についてですが、以下のことが挙げられます。

1. 要介護認定者の増加・軽度の者の増加。
2. 在宅サービスの脆弱性。在宅生活希望の高齢者が在宅生活を続けられない状況にある。
3. 居住型サービスの伸びが著しい。グループホーム、有料老人ホーム、ケアハウスの利用が伸び、居住型サービスへの関心が高まっている。
4. 施設サービスでの個別ケアへの取り組み。個々の入所者の状態に応じた個別ケアを提供する試みとして、入所者を小グループごとに分けてスタッフを配置し、住宅に近い居住環境を整えてケアの個別性を高めるユニットケアの取り組みが進んできた。
5. ケアマネジメントの現状。介護保険制度の中核となるべきケアマネジメントが、高齢者の状態を判断するアセスメントが十分でないため適切で効果的なサービス提供が行われていないという指摘もある。
6. 求められている認知症性高齢者ケア。要介護高齢者のほぼ半数は認知症の影響が認められることと、認知症性高齢者グループホームが3年間で10倍以上急増していることから、認知症性高齢者のケアが、高齢者介護の中心的な課題と言える。
7. 介護サービスの現状。事業者を選択するために必要な情報が十分に提供されていない。サービスの質への苦情が多い。従業者の質の向上、人材育成が課題。

 以上のことが挙げられます。ではその課題に対して2015年までにどのようにしていくかですが、「高齢者の尊厳を支えるケアの確立」ということを目標として挙げています。具体的には在宅で365日24時間切れ目ない在宅サービスを提供する。そのためには、日中の通い、一時的な宿泊、緊急時や夜間の訪問サービス、さらには居住するといった、切れ目ないサービスを一体的・複合的に提供する拠点(小規模・多機能サービス拠点)が必要と考えられています。このようなサービスがあると、安心を身近で感じられ、また利用者の生活圏の中で完結できるというメリットがあります。要するにデイケアやナイトケア、緊急でのショートステイの利用も可能な施設を地域に作っていくということです。

 その他に、自宅、施設以外の多様な新しい住まい方の実現というものがあります。例えば要介護状態になってから、現状では認知症性高齢者グループホームや有料老人ホーム、ケアハウスが利用されているが、それを拡大し、自宅ではない新しい住まいを考えていくということです。

 もう1つ、高齢者の在宅生活を支える施設も新たな役割が求められています。それは施設機能を再整理していくことになります。具体的には、サテライト方式によるデイサービス拠点を設置したり、逆デイサービスを実施したりという、今までは施設で行われていた人的・物的資源を地域に展開し、在宅サービスの拠点を施設外に設け、地域の高齢者を支援していくことが求められています。また、施設内においても、入所者1人1人の個性と生活のリズムを尊重した個別ケアの介護が求められ、特別養護老人ホームだけでなく、老人保健施設、療養型医療施設でもユニットケアを実施している施設が出てきています。そして現在課題に上がっている介護保険3施設の機能分担が明確にされていないという点を踏まえて、今後それぞれの施設の機能を生かしてどのようなサービスをしていくかが議論されていくでしょう。

 これらの新しいサービスの体系は基本的に住み慣れた地域で、在宅で暮らしていくことがキーワードになります。そのための施策をこれから模索していくことになります。そうしなければ、2015年には高齢者介護、介護保険制度が整わなくなるという危険性があるのです。ですから、これから地域においての高齢者の状況についてもどんどん変化していくことでしょう。その変化に戸惑うことも出てくると思います。しかし現状と今後の課題から、このような変化が必要なのだということを、少しでも理解頂けたらと思います。