ケアマネージャー 楢木博之
 先日、清水院長の同行で、認知症症状のある方を在宅で介護されているご家族とお話する機会がありました。認知症の介護という共通の問題を抱えたご家族の方々が定期的に集まり、介護の問題などについての情報交換を行っている会に、清水院長がアドバイザー役として参加され、私がそのお供をさせていただきました。
 私にとってはご家族の方々のさまざまな話を聞き、多くのことを感じてきました。認知症をかかえている方を在宅で介護するということの大変さ、苦労を改めて痛感させられました。その中で、私は何ができるのか、いやできることがあるのか、介護支援専門員として、またソーシャルワーカーとしてどうしていけばいいのか、多くの課題を頂いたような気がします。

 この会で聞いた話と、最近私が受けている相談の中で、気になる点がいくつかありました。認知症のある方を在宅で介護していく上で、様々な困難、そしてそれに対してのご家族の葛藤についてです。介護保険のサービスを利用したくても、デイサービスでは認知症症状が顕著だと対応が難しく、ショートステイを利用しようとしても不穏状態がより悪化してしまい、受け入れ困難になるということはよくあります。使いたくても介護保険のサービスが使えず、どうしても家族の介護負担が大きくなってしまうというケースはとても多いのです。介護負担が大きくなれば、ご家族の生活にも影響され、自分の生活のほとんどが介護に費やされてしまいます。
 場合によっては、子育てより介護で手一杯になってしまっている方もいらっしゃいます。その方の多くが施設入所という選択肢を考えながらも、在宅で過ごしたいというご本人の希望に応えたいという思いから、在宅介護を続けているのです。今のままの生活を続けるのがいいことなのかと、様々な葛藤を持ち合わせながら、在宅介護を続けられているのです。

 また施設入所を決めるときにも、最後まで在宅か施設かを悩み続ける方もいます。施設に入ってからも、本当にこれで良かったかと思われる方も多いのではないでしょうか。そのような方々に、私は何をするのでしょうか?様々な問題、苦しみなどに対してどうしていくのか、ご家族と共に考えていくことが、私の役割なのではないかと思うようになりました。
 相談員として様々な施設やサービスがあることを紹介することも、私の仕事の一部であることは確かです。そのための情報収集も必要です。しかしそれだけではなくて、その方1人1人の生活を支えていくために何をすべきかを、ご家族と一緒に考えていくことが重要ではないか、と今回の会に参加して強く感じました。

 私のような相談職は、とかく何かをしてあげたいと考えがちです。しかしご本人・ご家族と共に考え、生活を側面から支えていくことの方が大切なのではないでしょうか。実際に私の力では、多くの問題を抱えたご家族に何かしてあげることは難しい話です。どうしても限界が生じてきます。私がご家族の方の代わりにずっと介護することはできません。そうではなく、共に考える、側面から支援するということは可能なのです。ご本人・ご家族も何かをして欲しいのではなく、今の直面している問題を何とかしたいから相談に来られるのです。

 認知症という問題を抱えて介護されている方は、多くの不安や心配を常に持っています。それは在宅で介護している方も、施設入所している方のご家族も同じです。その不安や心配を一緒に考えていけるか、これが今の私の大きなテーマになっています。私ができることなどほんの小さなものです。特に在宅の方を支えていく為には、御殿場高原病院だけでも支えきれません。様々な機関や専門職の方々とも連携をとりながら、ご本人、ご家族を支援していく必要があります。その役割を担う1人になれるように、努力しなければと痛切に感じました。
 今後日本が迎える超高齢社会では、より一層認知症の在宅介護が問題になってきます。その中で当院も地域医療の役割を果たせる病院になれるよう、努力していきたいと思います。