| ケアマネージャー 楢木博之 | |
| もし自分のお子さんから「老化と成長の違いは何?」と聞かれたら、皆さんはどう答えるでしょうか。返答に詰まって、「そんなこと辞書を見れば分かるでしょ。それよりも宿題を済ませなさい」などと言ってごまかしてしまうかもしれません。明らかに違う言葉なのですが、その違いを説明しろと言われると、なかなかできない方が多いのではないでしょうか。 この質問は御殿場高原病院のホームページの中にある質問コーナーのところに届いたものです。質問を寄せてくれた方は中学生で、学校の授業の中で「老化と成長の違い」を調べているとのことでした。 私はこの質問を見たとき、 「今の中学生の授業はすごい難しいことをテーマにしているのだな。私が中学生の頃はそんなことは考えたこともない、頭は丸坊主で『甲子園に出るんだ』などと夢みたいなことばかり考えていたよな」 と昔を思い出しながら、妙に感心してしまいました。しかし関心ばかりもしていられず、この質問にはどう返事をすればいいのかと考えてしまいました。辞書で調べれば、言葉の違いは明らかになるのですが、それが今回の答えにはならないでしょうし・・・。そこで私は院長がよく話す「人生の山と認知症の関係」を思い出し、そのことをお伝えできれば回答になるのではないかと考えました。 では、人生の山とはどういうことでしょうか?人は産まれてきて、赤ちゃんから子供、そして成人へと歳を重ねていくに連れて、多くのものを体験し、学習し、そして多くのものを積み上げていきます。友人が増えていったり、勉強がどんどん難しくなったり、仕事の量が増えたり、結婚して家族が増えたりと、まさに上り坂、「獲得」の時期になります。 そして社会的な信用を確立していくと山の頂上に達して、その後は子供の巣立ちや両親との別れ、仕事からの引退、友人の減少など、今度は下り坂、「喪失」の時期を迎えてしまいます。これを図にするとまさに山のようになることはお分かりになると思います。この「喪失」の時期が認知症を引き起こす要因にもなります。ですから認知症にならないためには、この下り坂、喪失の時期をなくし、いつまでも上り坂、獲得の時期にしていけばいいのです。 以上を分かりやすく説明すれば、今回の回答になるのではと思いました。私が「老化と成長の違い」について回答した内容は以下のようになります。 【中学生の皆さんは今、「成長」の真っ最中ではないでしょうか。学校では新しい友人がどんどん増えていき、また勉強や遊びなど、これからももっといろんな経験をしていくでしょう。ではお年寄りはどうでしょうか。中学生の皆さんと同じように友人が日々増えていくでしょうか。勉強して新しいことを知る機会が多いでしょうか。いろいろな遊びに挑戦できるでしょうか。なかなかそのようにされている方は少ないと思います。そこが「成長」と「老化」の違いなのだと私は思います。 お年寄りは得るものより、失うものが多くなってしまうのです。そして失うものが多くなっていくと、気持ちまで「老化」してしまうのです。一方、「成長」はいろいろなものを学んで、吸収し獲得していくことです。ただ全てのお年寄りが、いろいろなものを失って「老化」しているわけではありません。歳をとってもいろいろな勉強や仕事などをしている方は大勢います。その方は歳を重ねても活き活きと生活しています。そこには「老化」という言葉が存在しないかのようです。 人は誰でも歳はとります。しかしいつまでも「成長」することは可能です。皆さんも日々「成長」をしていけば、毎日が充実したものになってくると思います。】 このように回答しました。どうしても「成長」は若い人、「老化」は年取った人とイメージしてしまいますが、「成長」は歳をとってもいくつになってもできますし、逆に若くても活き活きした生活を送れなければ「老化」につながってしまうということを伝えたかったのです。 ただ私もまだ今年31歳です。人生を語れるほど生きているわけではありません。私自身も成長の真っ最中だと思っています。ですから若輩者が何を偉そうなことを言っていると感じる方もいらっしゃると思います。今回の質問を頂いて、私も再度人生というものを考え、いつまでも「成長」を続けたいと感じました。 私だけでなく、日本全国の方が「成長」を続ければ『認知症』と無縁な、活気のあふれる国になるのではないかと私は思うのですが、皆さんはどのように感じたでしょうか。 |
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