介護支援専門員 楢木博之
 平成15年1月21日、各新聞で一斉に介護報酬の改正について報じられ、新しい報酬単価まで一部公表されました。訪問介護、居宅介護支援の単価が上がり、施設サービスの単価が下がったと言われていますが、実際には今回の改正の目的は何なのか、今後どのようになっていくのかについて、私の分かる範囲でお伝えしたいと思います。今回の改正について、厚生労働省の基本的な考え方は以下のようになります。

1. 介護保険施行後の介護事業者の経営実態を踏まえ、保険料の上昇幅をできる限り抑制する方向
2. 在宅重視・自立支援の観点から、要介護状態にあることや、できる限り自立した在宅生活を継続することができるよう、見直しを行う。
3. 個々の利用者のニーズに対応した、きめ細かく満足度の高いサービスが提供されるよう、サービスの質の向上に重点を置いた見直しを行う。

 今でも在宅の重視、サービスの質の向上、サービスの個別化については言われてきたことなので、さらに徹底するようにという方針が伺うことができます。そして、予防、介護状態の軽減を目指すために、各サービス提供者が専門性や特徴を出して支援していく努力が求められています。

 その具体的な中身についてですが、まず介護報酬の単価というものが何なのか、ということです。介護保険サービスには様々な種類があります。在宅サービスでは訪問介護・訪問看護・デイサービス・デイケア・福祉用具のレンタルなどがあることは、皆さんもよく知っていると思います。施設サービスでは特別養護老人ホーム・老人保健施設・療養型医療施設の3つがあります。これらのサービスを受けるのにはお金がかかります。その金額の値段がいくら掛かるかというのが、介護報酬の単価ということになります。
 例えばデイサービスに1日行ったらいくら掛かるかというのが、介護報酬の単価ということです。ですからサービス提供業者から言えば、介護報酬の単価が下がったということは、収入が下がることを意味しています。利用者側とすれば、支払う金額が少なくなるということになるのです。逆に介護報酬の単価が上がれば、サービス事業者の収入は上がりますが、利用者の支払いは高くなってしまうのです。ですから今回の改正で、サービス事業者も、利用者も互いに大きな影響を受けるということは間違いありません。
 そして介護報酬の単価が上がったのは、訪問介護と居宅介護支援になります。居宅介護支援については、現状では利用者負担がありませんから、利用者にとっては、訪問介護が上がったことで影響を受ける方が少なくないと思われます。他のサービスについては、下がっているところが多く、特に施設サービスについては3施設とも下がり、各施設ともに頭を痛めているところです。

 当院の場合、療養型医療施設なので、当然介護報酬の単価は下がりました。ただ、要介護1〜3の方については単価は下がり、要介護4〜5の方は単価が少し上がりました。上がったと言ってもほんのわずかですので、そのことで請求金額が大幅に増えるということはないと思います。ただ、今回の改正で、介護保険3施設の役割分担をきちんと行いなさいという指導が明確になったことも事実です。特別養護老人ホームはその施設の特徴、老人保健施設にはその特徴を、療養型医療施設にはその特徴を明確にしなさいということです。
 療養型医療施設の場合、特に医療・看護が必要な重篤な患者を受け入れることを期待されています。ですから自ずと要介護度の高い方の入所が多くなってきます。特別養護老人ホームや老人保健施設、在宅で対応が困難な医療・看護の必要な方は療養型医療施設への入所を勧められるというようになるでしょう。逆に老人保健施設・特別養護老人ホームの特徴にあった状態の方は、そちらへ入所するという話も出てくると思います。そして、現状では曖昧になっている介護保険3施設をはっきりさせたいというのが、今回の改正で厚生労働省の目指しているところだと思います。

 皆さんにとって改正改正ばかりでイライラしたり、政策に不満を持っている方もいると思います。現在は新聞紙上でサラリ−マンの医療費3割負担の動向が賑わっていますが、基本的に医療保険も介護保険も限られた財源しかありません。ただでさえ高齢社会になり、2050年には3人に1人が65歳以上になると言われ、介護を受ける人はどんどん増えていくでしょう。ですから医療・介護保険ともにどんどん財源が圧迫されていきます。介護保険では現在45歳以上の方が保険料を納めていますが、今後もっと若い年代の方からも徴収する動きになるかもしれません。要するに限られた保険料の中でやりくりするために、これからも利用者に、そして病院や介護サービス提供者にも大きな痛みを伴う改正になっていくことは間違いないと言っても言い過ぎではないでしょう。実際に今回8割近い市町村が、介護保険料のアップに踏み切ると新聞に載っていました。介護保険料を上げなくては、運営できなくなってくるということでしょう。私自身、保険料を上げるのであれば、介護保険が始まった頃に1号保険者だけ半年間保険料を取らなかったという政策は何だったのかと疑問に思っています。目先の政策にとらわれず、長期的な視野にたって医療・介護保険を運営して欲しいものです。

 以上、簡便に述べたつもりですが、なおご不明な点は当院でもお答えしますので、ご連絡いただければと思います。厳しい時代ですが、高齢になっても住みよい社会になってほしいものです。そして我々のような病院もそのための役割を果たしたいと考えています。