リハビリ 勝俣 実
 早いもので新病棟に移動して3ヶ月が過ぎようとしています。患者さんは初めは戸惑いを見せていましたが、現在では皆さん落ち着いておられます。日中は患者さんと職員の話し声や笑い声が響き渡っています。夜間は皆さんよく休まれていて、イビキの音がかすかに聞こえています。

 私が勤務するリハビリ室は3階で、窓から美しい富士山が一望できます。それは昔の銭湯に描かれていた壁画のように間近に迫ってきて、いつ見ても心が安らぎます。銭湯の絵と違って本物の富士山は日々色々な姿を見せてくれます。真っ白に雪化粧した富士山、夕日に赤く染まった富士山、晴れた日には輝いて見える富士山など、様々に化粧直しをして姿を現し、葛飾北斎の『富嶽三十六景』も及ばない生きた富士山の変化する姿が、居ながらに楽しめます。

 その富士山の姿を見るために、毎日リハビリ室に通ってくる患者さんもたくさんおられます。
 Aさんは元気なころ、友人とゴルフをしに近くまで来たことがありました。その時、富士山に雲がかかっていて見ることが出来ず、残念な思いをした経験があります。今、ここから見る富士山に感動し、晴れ晴れと輝く素敵なお顔を見せてくれるようになりました。

 Bさんは膝が悪いので車椅子で来られますが、いつも不機嫌な表情をしておられ、治療中も「痛いな、優しくやれ」「早くしろ」と怒ったような言い方をしている方ですが、富士山が見える日は穏やかな表情になり、「きれいだね〜」と優しく話しかけてこられます。

 Cさんは妄想があります。「ここに入れておいた物がない。誰かが持っていく」と言ってカーテンを閉めきりにし、薄暗いベッドの上に座りこんで考え事をしています。しかし富士山を見せにお連れすると、とたんに表情が明るくなり、優しくなって、元気な声になり、笑顔も出るようになりました。

 皆様も当院にお越しの節には、ぜひリハビリ室にいらして下さい。何もお構いはできませんが、晴れてさえいれば、富士山の麗姿だけはたっぷりとご馳走することができます。お待ちしております。