総師長 佐野清子
 明けましておめでとうございます。澄みきった青空にそびえる富士山の姿に、励まされたり、癒されたりしながら、10月より再び働かせて頂いています。

 12月1日、新病棟への移動を終えました。患者様共々ようやく落ち着きのきざしが見え始めて、新しい年を迎えたことを心から喜びたいと思います。
 20年以上も前、小山町に住むようになり、勤め先を探しました。認知症の看護については全く知らないことばかりでしたが、これからの医療と思えて入職しました。想像し得ない問題や行動に対応しきれず、仕事への意欲も失って家庭に逃げたり、他の職場に移ったりしながら、時を経て3たびこの病院に勤めようと決めさせたのは、重度の認知症症と診断された方たちが垣間見せる優しさに魅せられてのことでした。

 重度のアルツハイマー病の方がいました。何でも口に入れて食べてしまう異食、1人でのおしゃべり、意志の疎通は全く不可など、数々の問題行動がありました。
 ある日、病院の裏庭で数名の患者様とくつろいでいる時、1人声高くお喋りされることに反応された方が、強い口調で文句を言われました。その時、見ていた私がおろおろするくらい、しょんぼりされている姿を見て、「この方にこんな感情があったのか」と驚くと同時に、対応の仕方を考えさせられました。言葉掛け1つ、介護の仕方1つ1つが良かったのか、悪かったのかを、患者様が教えて下さっていることに気付き始めました。「患者様は自分の介護力を映す鏡である」と。
 力には力、強い言葉には強い言葉、笑顔には笑顔で反応される。健常者はこうはいきません。
 気持ちや態度が裏腹なのはいつものこと、挨拶してプイと横を向いてしまう方に認知症はないと思っています。このことに気付いて介護していると、いっぱい喜びを感じることができるようになりました。

 お年寄りの人たちは、加齢に伴う身体能力の低下や単一疾患の治療だけでなく、多くの疾患の既往を持ち、その後遺症もあります。悪化を防ぎ、安定した状態を少しでも長く保つことができなければ、生活の質を上げることにはつなげません。そこで看護師の観察力、判断力、対応力が重要になってきます。1つ1つの事例を通して患者様より学び、それを活かしていかないと、経験値を高めていくことはできません。

 介護保険の導入以降、医療はサービス業であると言われるようになり、そのサービスの質が問われるようになりました。サービスの質の向上も患者様より学び、1人1人が経験値を高めて、その人に適した介護を実践していく力がなければなし得ないことです。
「看護師は何をする人?」
「指導員は何をする人?」
ということを今一度自らに問い、協力し合って車の車輪のように動いて初めてよい看護・介護は成り立つと思っています。患者様を鏡とし、そこに映る自分の姿を納得して見つめられるよう努力していきたいと思います。