| 歯科医師 田中廣一 | |
| 口は災いのもと、口は万病のもとなどと、昔から善きにつけ悪しきにつけ口に関する諺がしばしば用いられていますが、口の中の病気といえば虫歯から口の中の癌にいたるまでいろいろです。 口の中の癌については別の折にお話したいと思いますが、一般に歯の痛みのあるときは、虫歯による神経の炎症とか、化膿による腫瘍の急性症状などがあります。腫れてくると嚢胞とか腫瘍(良性、悪性)も考えられます。怪我などによる外傷や奇形なども稀にみられます。このほかにも粘膜疾患として口内炎などがよくみられます。 高齢者はよく歯の欠損で入れ歯のお世話になります。この入れ歯が合わなくなって、口の中の粘膜や舌にキズ(潰瘍)をつくる褥瘡性潰瘍があります。入れ歯の経験者であれば誰でも一度や二度はあると思います。この他にも中高年の女性を悩ましている病気に、舌痛症(舌が燃えているようにヒリヒリ痛む)や口腔扁平苔癬、アフタ性口内炎、などがあります。高齢者においては基礎疾患として糖尿病などがあると、感染し易い体質から歯周病から歯肉の腫瘍などがよくみられます。 前回もふれましたが、口の乾きもお年寄りには欠かせない症状です。向精神薬、利尿剤、降圧剤、抗コリン薬などでも口の乾きにつながります。そうなると口の中の汚れた食べ物はいつまでも残っている場合がよくあります。このようなお年寄りへの対応には、手用歯ブラシによる自己清掃が重要で、手指の自由が利かない患者には電動歯ブラシの使用や介助によった清掃が必要となります。とくに歯についたプラーク(歯垢)は機械的にこすりとることが重要です。歯ブラシは硬めの小さめのブラシがいい。消毒には含嗽剤(イソジン含嗽剤)も有効です。当院では食後口の中の清掃は徹底的に指導しています。 高齢者で注意しなければならないのは誤嚥性肺炎です。通常は口の中に入った食べ物は噛み込まれて嚥下により食道を介して胃に送られますが、高齢者ではこのタイミングがうまくいかず気管支の方に誤嚥されるのです。こうなると体力の弱った高齢者にとっては誤嚥性肺炎は避けて通れない病気となります。このリスクを少しでも防ぐには口の中をきれいにすることが重要となります。食べ物のカスはいつまでも口の中に残さないためにも食後すぐ磨くことが大事なのです。 一般に人の口の中は37℃前後に保たれ、食べ物のカスなどがあると、細菌にとってはいい環境となり、増え続けることになります。高齢者は体力も落ち免疫能も弱く易感染状態にあるため、容易に誤嚥性肺炎になりかねません。その他にも胃炎、心内膜炎などおこしやすくなります。特に寝る前の口の中の清掃は大事です。義歯などもはずしておくのがいいでしょう。基礎疾患として糖尿病などのある人は特に気をつけてほしいものです。口は万病のもとなども、このようなことから言われるのかもしれません。 この稿を書いている時、今日の朝日新聞の天声人語に政治家のタイプを体の一部分で表現していました。例えば、腹の据わっているとか、腹芸とか、腹に一物、などが人物評価に使われていました。また腹を割って話すとなると、これだけでも往年の政治家が目に浮かびました。一方、口の方のタイプとしては、口弁慶や口八丁手八丁と、いずれもほめ言葉には使われていないようです。口は禍の門とさえいわれている今、渦中の某政治家を例えているようでした。やはり口は怖いものであることには変わりないようです。 そうこうしている間に、野党の弁舌さわやかな某政治家が秘書問題で本日辞職にいたっては、まさに口は禍のもとです。この手の話題は与野党問わず今後も続きそうです。もう少し次元の高いニュースがほしい今日このごろです。 |
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