| ケースワーカー 大塚 亮 | |
| 夏の日差しが眩しい頃、御殿場高原病院に入院されていた患者さんが自宅退院されることになりました。約1ヶ月間の入院でしたが、入院当初は歩行にふらつきがあり、職員の話し掛けに無表情で応じておられました。病室に行っても、「家に帰して下さい、もう良くなりましたから」と、泣きながら訴えることもありました。 しかし、入院生活に馴染んでくると、徐々に表情が良くなってきました。「家に帰して・・・」の訴えはありましたが、その訴えが悲観的ではなく、前向きな訴えに変わっていったように感じました。また、お花の先生をしていたこと、ピアノが得意だったこと、ご主人のことなど、楽しいお話を笑顔でして下さいました。職員が話し掛けを行うと「嬉しいわ、嬉しすぎて涙が出てくるの」と、職員の手を握りしめながら話して下さいました。また歩行が安定してきたため、自信を取り戻してこられたのか、ご自分から「散歩に行きたいから連れていって下さい」と話して下さるようになりました。 症状が改善したきっかけの1つには、ご主人が毎日のように面会にこられらことがあります。ご主人はとても熱心な方で、面会に来ては、一緒に散歩されたり、リハビリや食事に付き添われたりされていました。ご主人が帰られた後お話を聞くと、「主人はとても優しいの」と笑顔で話して下さいました。ご主人もだんだん患者さんの症状が改善されてきていると感じられ、私に「家にいた頃とは別人のように歩行もしっかりしてきて、表情も良くなってきました。これなら家に連れて帰っても大丈夫そうです」と話して下さいました。退院が決まったことを本人に伝えると、「本当に嬉しいわ」と涙を流しながら喜ばれました。 退院当日、ご主人の用意した黒のワンピースに着替えていらっしゃいました。その姿はおシャレな奥様といった印象を受けました。玄関で多くの職員に見送られると、嬉しそうな、それでいてどこか名残惜しそうな表情をされました。そして私にそっと「必ず家に遊びに来て下さい。ご馳走しますから」との一言に、とても感動したことが今でも忘れずに残っています。本当は、患者さんの退院は喜ばなくてはいけないのですが、少し淋しい気分になってしまいました。 後日、ご主人から電話をいただき、お嫁さんの手伝いをしながら家事をしていること、天気のよい日は必ず2人で散歩に行っていることなど、楽しく暮らしていることを知りました。オシャレな帽子をかぶって、笑顔で並木道を散歩しているお二人の姿が目に浮かびました。 |
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